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『春を待つ芽のように』
北海道の長い冬もようやく終わりを迎えようとしています。雪の下でじっと力を蓄えていた芽が、やがて春に向かって顔を出すように、子どもたちもまたこの1年でたくさんの力を蓄え、次の春へと歩みだそうとしています。
最近の年長さんは、私が職員室にいると、すかさず膝の上に乗ってきます(笑)「もう、1年生になる人たちが~」と言うと、「1年生になるからだよねぇ」と子ども同士顔を見合わせて、キャッキャと笑うのです。残り少ない園生活を体いっぱいで味わうかのように、先生たちに抱きつき、甘える年長さん。でも同時に、心のどこかではちゃんと❝次のステージ❞へ進むことを理解し、今を、残りの時間を噛みしめているようにも見えます。甘えているかと思えば、年少さんや年中さんには、とても頼もしい姿を見せてくれています。困っている子にそっと寄り添い声をかける。優しく教えてあげる。手を引いてあげる。それは、けして❝やってあげている❞という優しさではなく、相手の気持ちを思って動く、本当の優しさです。そして今、その優しさは確実に受け継がれていると感じます。
年長さんの優しさを、見たり経験したりしてきた年中さんが、今度は年少さんに優しく声をかけています。年少さんもまた、そんなお兄さんお姉さんたちの姿を見ながら少しずつ真似をし始めています。優しさは、教え込まれるものではなく、見て、感じて、心の深いところに静かに根を下ろし、自然と手から手へ…まるで目には見えない❝優しさのバトン❞が、年長さんから年中さんへ、年中さんから年少さんへと手渡されているようです。
園内には今、年長さんのお部屋から聞こえる卒園の歌、そして、年少さん年中さんのお部屋から聞こえてくる年長さんへ贈る歌がそれぞれ響いています。それぞれの歌声が重なり合い、まるで1年間の子どもたちの成長を物語っているようで、私の涙腺が早くもゆるんでしまいます。
振り返れば、この1年もたくさんの挑戦がありました。できなかったことができるようになった喜び、お友だちとぶつかり合いながらもわかり合えた経験、みんなで力を合わせ悔しさや涙を乗り越えその先にあった達成感。子ども達が経験した一つひとつが、確かな力に結びつきました。そして、私たち大人もまた、子どもたちの真っすぐでひたむきな姿から、努力することの大切さや、本当の優しさとは何かを改めて教えてもらいました。
まもなく卒園式、そして修了式を迎えます。それぞれの学年がそれぞれの場所で、この1年をやりきり、一人ひとりが積み重ねてきた成長を、心から誇りに思います。胸を張り、今までやり遂げてきたことを自信に、次のステージへ進んでほしいと願っています。
そして、いつもあたたかく子どもたちを支え続けててくださった保護者の皆さま、本当にありがとうございました。日々の励ましや、見守りがあったからこそ、子どもたちは安心して挑戦し、失敗し、また立ち上がり、前に進むことができました。
春は、もうすぐそこまできています。だからこそ残りの日々を、子どもたちと一緒に目いっぱい楽しんで過ごしていきたいと思います。たくさん笑って、たくさん話して、時には甘えて、❝みんなに出会えてよかった❞と思える思い出を、心いっぱいにふくらませながら過ごしてほしいと願っています。
卒園式、修了式では、保護者の皆さまとともに子どもたち一人ひとりの成長を喜び合い、この1年の頑張りを振り返り、次の一歩を応援できる時間にできれば幸いです。
春を待つ芽のように、子どもたちはそれぞれの場所へと歩き出します。その日まで、この大切な時間を思いきり楽しみ、思い出を積み重ねていきたいと思います。
園長 谷藤実和 |