「未来へ」
寒さの中にも、少しずつ春の暖かい日差しが感じられるようになってきたこの頃、年長さんのクラスからは卒園式の歌を練習する声が聞こえてきます。その歌声を聞きながら、年長さん一人ひとりの顔を思い浮かべ、送り出す寂しさを感じ、早くも涙が溢れそうになっています。その気持ちは年長さんの子ども達も同じようで、この頃の職員室には年長の子ども達が入れ代わり立ち代わり訪れ、先生達との残り少ない時間を惜しむかのように過ごしています。背中におんぶされたり、膝の上に座ったりしながら名残惜しそうに甘えています。「卒園したくないな」「ずっと幼稚園でいいかな」と本当は叶わない願いだと知っているのに口にしてみて、「じゃあずっといてもいいよ」と先生に言われ満足そうな表情を浮かべている子ども達。こうやって、話を聞いてもらい、受け止めてもらい、抱きしめてもらい、1ヶ月ほどをかけて就学への気持ちを少しずつ固め、ようやく未来への一歩を踏み出していきます。毎年の風物詩のように、この時期繰り広げられる子ども達と先生達のやりとりを、微笑ましく思いながら眺めています。
年中さんは、9日に予定しているお別れ会の計画と司会を任され、今までお世話になった年長さんへの感謝の気持ちを胸に立派な会にしようと臨んでいます。次は自分たちが小さいお友だちの手本となり、先頭を歩いていかなければなりません。みんなのリーダーになるべくお別れ会という年長さんからバトンを引き継ぐ行事を通して、自覚と責任を少しずつ身に付け、頼もしく成長していく姿が想像できます。
そして年少さんは、年長さんからの愛情(かなり過保護気味な)を目一杯受け、のびのびと成長してきました。日々の遊びや活動などでのお友だちとのやり取りを見ていると、年長さんからの教えである“小さい者には優しく”がしっかりと根付いているように感じます。満3才の小さなお友だちに対しての、譲ってあげる、教えてあげるが、当たり前のように出来ていて驚きを感じます。どの学年の子も、年長さんの姿から学び受け取ってきた優しさを自分の力にし、誰かの為に活かしていこうとするその姿に、輝く未来を想像せずにはいられません。卒園式を控え、いつも思う事は子ども達の成長がこの先もずっと見られたらいいのに…です。私が初めて担任を持った子はすでに三十路を超えていますが、その中には私の愛犬のトリマーさんだったり、通っている歯医者の衛生士さんだったり、今では私がお世話になっている立場の子達がいます。卒園していった子達が大人になり再会し、幼稚園時代の思い出を語ってくれる時、このたいせつ幼稚園でたくさんの子ども達と出会えた事に心から感謝し、また昔のまま変わらずに「先生!」と笑顔で言ってくれることを心から嬉しく思います。これから卒園する子ども達にも、幼稚園でお友だちや先生と過ごし、学んだ日々を心に刻みつつ、自分の可能性を信じて進んでいってほしいと思います。そして、再会したあかつきには変わらない笑顔で「先生!」と声を掛けてほしいなと願っています。
少し早いですが、保護者の皆様、今年も1年間大変お世話になりました。子ども達が大きなハードルを越えなくてはならなくなった時、くじけそうになった時、一緒に悩み励まし、いつも心に寄り添ってくださったご家族の皆さまのおかげで、子ども達は力強く前に進む事ができました。有難うございました。
卒園式、修了式には、未来へと向かい旅立つ子ども達と保護者の皆様と共に、私たち教職員も嬉し涙を流しながら喜び合えるよう、残り少ない日々を大切に過ごしてまいります。
園長 谷藤実和 |